MINAMATA ミナマタ を見ました

面白かったです。
面白かったうえで、これはどうなんだ…?と思う点もありました。

まず何故見に行ったかというと賛否両論だったからなんですよね。面白かった!という人もいれば、水俣病患者の写真の使い方に問題があるという人もいたので、どうなんだろうと。
事実関係はこれから調べるので、映画単品としての感想を書きます。

演出や画作りが非常に質が高く、引き込まれたした。素晴らしい出来だと思います。
ロケ地は日本じゃないのでそこはちょっと引っかかる気持ちもありますが、70年代日本への理解が非常に深い映像だったと思います。生まれてないから知らんけど。
方言の再現度も非常に高く、私は近隣の出身なので怒鳴り声とかは小さい頃に叱られた記憶が蘇ってビクビクしました…。怖かった…。

まずちょっと残念だったのは、チッソ社社長の扱い。
あからさまに悪代官なんですもん…。
ていうか初登場のところ、もはや悪役としていじってるギャグだと思いたかった。著名な写真家が来てますよ!つってクソデカ顔写真だけ差し出す秘書っておる???
買収のところもちょっとアホすぎるっていうか…主人公が叩き落としたら5万ドルがパァやん!と思ってハラハラしちゃった。
あと同情で心が動いているのかひたすら冷徹なのかも掴めなくてモヤッとした。ここは想像しろってことだろうか、思い切り実在の人物だからなぁ…。

で、主人公の扱い。こっちも実在人物が元なので役名じゃなくてジョニデって呼びます。
ジョニデがマジでダメダメ人間なんですけど、水俣病患者がすぐそばにいるところでダメダメ人間っぷりを遺憾なく発揮されるとうわぁ…と思っちゃってダメだった。
いや主人公らしく奮起したり鼓舞したりするところもあってそれはよかったんですけど。でもクライマックスで演説して協力してくれることになった日本人にすら「ARIGATOU」とは言わず「Thank you」なのが…なんかなぁ…。
あとさ、取材中に恋愛するのはさ…。ちょっとさ…。どうかと思うっていうかさ…。
危機を乗り越えたりなんだりでお互い燃え上がるものがあったのはわかるよ。わかるけど、物語として文句言わせて欲しいんだけど、最後の最後に勝訴記念でキスするくらいに抑えて欲しかった。史実がどうだったのかはいったん考えずに言ってます。
結局彼が主人公であることで、作品全体が「アメリカから見た水俣病」だし、映画のねらいは明らかに環境保護の意欲促進なので「アメリカから見た水俣病って環境保護の話のダシ程度なんだ」って感じちゃいました。
エンドロールで写真が流れていくのも、カメラマンの名前があるのは粋な演出だったけど、事件の名前と地名と写真だけ見せられてもぶっちゃけどう感じればいいのかわからないんですよ。だって水俣病は汚染を自覚していてやらかしてたのがわかってるわけだけど、それと同列に別の場所・時代での事故を取り扱えるのか、人為的ミスなのかどうなのか判断できないわけだから。
ラストで雑に他の案件も同列に並べたせいで、「水俣病に寄り添う」というメッセージは全然感じなくなっちゃいました。

水俣病の闘いをしてきた人達って、「怨」を掲げてるんですよ。自分達に何の落ち度もなくもたらされた厄災に対して、本当に深い怨み、感情があったと思うんです。それに対して、アル中アメリカ人が悪魔のささやきを振り切って若く理解のある後妻をゲットしました!って話を乗っけていいのかなぁ。



この記事を書いた後に調べたんですけど、やっぱ嘘を盛り込みすぎですわこの映画。
実際の地名使わずに作れば許せたレベル。